テセ当日

まだまだ暑い日が続く8月24日
当日、僕側の両親は一緒に来てくれるとのこと。
僕も30前だし、妻もいるし、何せ不妊治療も兼ねた産婦人科に60近い二人は来にくいんじゃないかと思って断ったのですが、二人とも来てくれることに。
父親の運転でリプロまで車で向かいました。
待合室ではなく、手術待機室へ。
待機室には本人と奥様しか入れないらしく、両親は待合室で待ってくれていました。
待機室は窓がない小さな部屋で薄暗く、ベッドと荷物置のラック、パイプ椅子が1つという、僕にとっては雰囲気に飲み込まれそうな部屋でした。
そこで妻と二人。
どれくらい待ってたかな。
二人とも緊張を和らげようと他愛もない会話をしているのがお互いに分かる程、緊張していました。
そして待機室の扉が開き、看護師さんが迎えに来ました。
妻「行ってらっしゃい。」
僕「行ってきます。」
妻は毎朝、僕が出勤するときいつも玄関の外にまで出て、僕がマンションの階段を降り、車に乗って角を曲がる寸前まで上から見送ってくれています。
その時と同じように見送ってくれた妻。
あの時も同じ様に待機室を出て、角を曲がり手術室に入る直前まで見送ってくれた妻。
手術室に入る直前、振り替えるといつもの様に見送ってくれた妻の顔を見て、心が落ち着きました。
本当にいつもありがとう。
頑張ってくるよ。
そう心に決め、手術室に入りました。
ベットに横たわると
目の前にはドラマとかでよく見るいかにもな照明。
周りにはたくさんの機械。
怖さと不安で手が震えていました。
腕に麻酔のための点滴をしました。
看護師さんの「では、麻酔いれますね。」
その一言の後、
点滴をしている左腕から、何とも言えない嫌な冷たさが血管を伝わり、体を巡り始めているのが分かりました。
その嫌な冷たさが胸の辺りに来た途端、今まで味わったことのない目眩がしました。
気が付くと、待機室の天井でした。
横には心配そうに見守ってくれている妻。
まだ頭がぼや~っとしてる中、妻の顔を見てあぁ、終わったんだなぁと思いました。
1時間くらい経っていたようです。
通常、精子が早く見つかると15分程で終わる手術。
1時間もの間、この狭い空間で1人で待っていた妻。
僕以上に不安だったと思います。
妻も頑張ってくれてありがとう。
しばらくして石川先生が入って来られました。
精子は見つかりませんでした。
先生も必死に隅々まで探してくれた様です。
まだ少し意識がぼーっとする中、
(あぁ、、ダメだったか、、、)
そう思いました。
落ち着くまでこの部屋を使っていいとの事だったので、頭も少しハッキリしてきた頃、部屋を出て妻は会計と次回の予約をとりに受付へ。
僕は両親を探しに待合室へ。
円形の待合室をぐるっと周り、人が少ない裏の方で両親の姿を見つけました。
僕「あかんかったわ…」
父親「そうか。あかんかったか…」
母親「お疲れ様。…大丈夫?」
両親の悔しそうな顔を見て心が締め付けられる思いでした。
産婦人科の待合室で60近い2人が待つのも色々と辛かったと思います。
そうして妻が会計を済ましてくれ、4人で帰りました。
帰りの道中、手術の事は一切話になりませんでした。
4人共、それぞれ気を使っていたのかな?
気まずい雰囲気は全くなかったのですが自然と手術の話にはなりませんでした。